2014年11月22日土曜日

東北大学リベラルアーツサロン2011.9.2 宮本正夫氏「認知科学としての仏教」

東北大学リベラルアーツサロン宮本正夫氏「認知科学としての仏教」


三年前の20119月、せんだいメディアテークで開催された東北大学リベラルアーツサロン「認知科学としての仏教」を聴講しました。

講師である宮本正夫(みやもとただお)氏は当時、東北大学大学院国際文化研究所教授で付属言語脳認知総合科学研究センターのセンター長でした。

この講演の動画は東北大学リベラルアーツサロンが公開してYouTubeにアップされています。


実際の講演で配布された資料は2つあり、ひとつは論文形式のものでpdfファイル化されて下記のサイトに置かれています。URLを見るとこのpdfファイルはInstitute of East Asian Studies Thammasat University(タイ国タンマサート大学東アジア研究所?)のサイトに置かれているようです。


(このpdf資料のP6で下から四行目で「簡単に言えば、それは好みの問題である。」(氏の研究室の学生さんの訳)とありますが、ここは「簡潔なものがよいかどうかは好みの問題である。」と言ったほうが良さそうです。)

もうひとつは講演で使われたスライドショーのハードコピーでした。

講演の内容については上記YouTubeの動画とpdfファイルを見て頂くことになります。内容の理解の前に、今講師が何をしゃべっているかを知る上で障害になりそうなのが、スライドのどこを指して話しているかがわからないことです。「ココでは...。」「ココを...。」というフレーズが何度も出てきます。それだけ重要な箇所であるわけですが、それが映像を見ているだけではわかりにくく、もしかして解像度を上げるとレーザーポインタの赤い点が見えるのかもしれないのですが、内容の理解に努めて想像するしかありません。

以下は参考情報と感想です。

実際の講演の一部がYouTubeの動画では省略されています。理解に差し支えない範囲で短くするためでしょう。記憶しているところを列挙します。

① 氏が自分は仏教の真髄を理解していますと断言した場面があり、それに反応して初老の聴衆がおひとり高らかに笑っていました。

② 自己紹介の部分が省かれています。同じ内容が書かれている箇所を他のサイトから2点引用します。

東北大学リベラルアーツサロンのサイト(http://www.cneas.tohoku.ac.jp/hplas/sub_report/no12.html)から ー 宮本正夫(みやもと ただお) 東北大学大学院国際文化研究科 教授1948年大阪府堺市生まれ。最終学歴:Ph.D.(カナダ:ビクトリア大学言語学部)、専攻:心理言語学。私は心理言語学者です。私が興味を持つ色々のテーマの一つは、言葉が脳の中でどの様に処理されるかです。言語学は、全て(学士、修士、博士)、カナダで学びました。しかし、カナダで二十五年間学びまた教える前は、タイ国とスリランカで八年間仏教僧として出家生活をおくっていました。今年で定年退職ですが、退職後は直ぐにタイ国・スリランカに戻り、仏教の勉強に専念する事にしています。 ーー

Amazonの書籍の著者紹介から ーー 筆者 (Tadao Miyamoto) は、東北大学・大学院国際文化研究科の名誉教授。専門は心理言語学。カナダ・ビクトリア大学の言語学部で、B.A.(学士), M.A.(修士), Ph.D.(博士)を取得した後、日本に戻るまでの8年間、同大学で教鞭をとる。(現在も同大学のAdjunct Professorである。) カナダに移民として渡る前の8年間、タイ、スリランカ、インドネシアで、テーラワーダ仏教の出家僧としての生活をおくる。日本にて社会学で学士号を取得し東南アジアに渡るまでの3年半の間、大阪・神戸の料亭などで和食の修行を行う。 ーー

Amazonによれば2013/7に「知的な英語のすすめ」という本をKindle版でだしているようです。 2012/8に出した”Typological Studies on Languages in Thailand and Japan (Hituzi Linguistics in English No.19)宮本正夫、小野尚之、Kingkarn、上原聡(本書は、タイ国チュラロンコン大学言語学部と東北大学国際文化研究科付属言語脳認知総合研究センターとの共同研究活動として2010年にバンコクで行われたシンポジウムの発表をまとめたものである〜〜。


③ 氏は英語暮らしが長く日本語を使うのに苦労するため、講演中は集中力を必要とするので、聴衆は静粛を保って頂きたいとお願いしていました。


④ 「自分にとっては仏教が一番大事。」「これから二三年かけて書きたい本のアウトライン、...」「この本を書くことによって、その後の出家生活(研究生活も?)の資金としたい。」「はしょってすみません。」「あと5〜10分で終わります。質問をとる時間がなくてごめんなさない。」



講演で言及された書籍二点

岩波文庫 入矢義高 訳注 「臨済録」
この本から氏が引用した箇所はすべて上記の論文形式pdfファイルで読めます。


Bantam Books STEPHEN HAWKING and LEONARD MLODINOW "THE GRAND DESIGN"
氏によれば「中学生レベルの英語力で読める」とのことですが、私は読み通すのに一年以上かかりました。

このトピックの本質から逸れた話になりますがが、この本のP42には下記の下りがあります。

"A different kind of alternative reality occurs in the science fiction film The Matrix, in which the human race is unknowingly living in a simulated virtual reality created by intelligent computers to keep them pacified and content while the computers suck their bioelectrical energy ( whatever that is). ..."

ここでホーキング博士が引用している映画マトリックスは個人的に好きな映画なのですが、仏教のイメージと重なるものがあると感じます。ここで言っている、人間をダマしているインテリジェントコンピュータをその人間のこころと入れ替えて見れば仏教の教えるところと大きく隔たってはいないのではないでしょうか。すなわち、悟りを得て解脱に達することは、映画の主人公ネオのように覚醒することです。

以下は私の感想です。

  • 自分が住む地方都市にも、こういう方が住んでいらしたのだと知って驚きました。できることなら出家生活の体験談を披露していただくなりの機会があったら良かった。独自の視点と体験を持つ氏のような方であればユニークな法話を期待することもできたはずです。
  • 臨済録は普通の人が読んでもちんぷんかんぷんだが、書いてあることは三種のメッセージにまとめられるのだとおっしゃっています。学生時代に読んだ時には皆目わからなかったが、出家してわかるようになったとも。宮本氏は仮に臨済録を題材に取った公案を出されれば透過できる見性した方なのですね。
  • 論文P8〜9では、臨済録から引用した上でこう書いています。「さて、それらの引用を引用のままにしておき、ここでは何ら説明を加えない。それ故、今この時点では、それらの引用文が含む意義が理解してもらえないと思う。しかし、次の第四セクションで、脳科学などの基礎概念を紹介し、そして第五セクションで「仏教とはボトルネック・モデル」であるとの説明を行う。それらの内容を理解してもらえれば、上の臨済録で述べられていることの意義が悟ってもらえるはず。」 しかしながら、自分は未だに臨済録の引用箇所の意義が悟れていません。
  • その最初の「Here and Nowへのリマインダー」を示す引用部は、「生き生きしている」と説明されています。確かに両手を広げたり、喝したり、すぐ打ったり、払子をさっと立てたりする動作をイメージすると生き生きしているような気がします。注意を惹かれる、その瞬間に引きつけられる→(前後を引きずらずに)その瞬間に集中するという意味ならそうなのかなぁとも思えますが、そんなもんで良いの?
  • 次の「禅(仏教)の神髄」については、これまでの書籍の読みかじりから、朱線部の「心が六種の感覚器官を通してはたらく」ことの意味がわかるように思います。
  • 最後の「正しい修行法」で坐禅もしないとあり、宮本氏は何度か「何かをやろうとしたら、(必ず)失敗してしまう。」「何もできないんです」と話していました。大昔の中国の祖師方は必ずしも坐禅して悟ったのではないらしいのですが、じゃあ何をするのか?何かをやって(一発)悟ろうという自我意識が悪いとは読んだことがあります。「理解を深める」とか「正念」を維持するとか、日常のこころの正しい持ち方を積み重ねてある日何かを縁にして悟りに達するのだということでしょうか?でもこれは臨済録やこの講演、ホーキング博士の著作から得たことではなくて、これまでの禅の書物の読みかじりから拾っただけのものです。
  • 思うに氏でさえ出家したからこそわかるようになったのであり、自分がわかる道理はないのではないか?講演とホーキング博士の本と臨済録の断片でわかることなのでしょうか?
  • 主にテーラワーダ仏教についての知識が、氏の講演を多少ながら理解する上で役立ちました。
  • 氏は新しい著作を出版されたのでしょうか?ネットで探しましたが2014年11月現在見つかっていません。氏は今どこにいらっしゃるのでしょうか?タイ国で師と仰ぐおばあさんの元で修行なさっているのかなあ...。

以上